日本臨床獣医フォーラム(1)の続きです。
フォーラムで8つの講義を受けましたがドッグトレーナーとして一番役に立ったのがこの講義です。
「うちの子はなぜ?○○な行動をするんだろう?犬の困った行動を考える」
数多くの犬のしつけ本を出していらっしゃるドッグトレーナーの矢崎潤さんが講師です。
3匹の犬の問題行動と原因調査、解決方法を話してくれました。
このブログでは「留守中の吠え」について紹介します。
10歳のビーグルです(写真はイメージです)。
このワンちゃんは家族が出掛けると吠えます。
留守中のことなので家族は気が付いていませんでしたが、近所からの苦情でわかったそうです。
このお宅には先住犬がいて最近亡くなったそうです。吠えはこの頃から始まったそうです。
家族が出掛けた後のワンちゃんの様子を見せてもらいました。
リビングの中を吠えながらせわしなく歩き回り、玄関に向かう扉を勢いよく引っかいていました。
これだけ見ると「分離不安」と思ってしまいますが、矢崎さんの見立ては違っていました。
ビデオの中でおもちゃに入っているおやつを食べるシーンがありました。この状態の分離不安だとおやつを食べる余裕はないそうです。
このワンちゃんはこの家に来てから一人になったことがありません。先住犬が亡くなって、留守番の時に初めて一人になり、何をしていいのかわからなくて不安になっているというのが矢崎さんの考えです。
解決策として2つの提案をしていました。
一つは「遊び」の提案です。
普段からおやつを入れたおもちゃ(コング等)を与えるようにし、一人の時でも遊べるようにしてあげるというものです。
もう一つは「居場所」の提案です。
ケージは先住犬が亡くなってから入るのを嫌がるようになったので、別の居場所を作ってあげるというものです。
ソファの上に犬用ベッドを置き、普段その上に大人しくしていたら褒めてあげます。
この2つの提案を飼い主さんが実行したところ吠えは収まったそうです。
留守中はおもちゃで遊び、飽きるとベッドで寝ているそうです。
ーーー講義はここまでーーー
このワンちゃんの「吠え」の原因は、分離不安ではなく先住犬の死による環境の変化でした。
本件で使われた解決策は分離不安でも使われるので、もし分離不安と判断されたとしても同じ解決策が使われたと思われます。
しかし分離不安の治療では薬物を用いることがあるので、相談しに行った病院によっては薬物療法を勧められたかもしれません。
真の原因を突き止めることは、とても大事なことだと実感しました。